エンパワメントフィロソファー
ひぐちまりです。
3月21日、
伊勢神宮での奉納演奏のために
参加者は前日の3月20日に集合し、
大鼓の練習をしました。
主催者であり重要無形文化財総合指定保持者でもある
大鼓奏者 大倉正之助さんから直々に指導を受けるという
なんとも贅沢な時間。
大倉さんは
「鼓を打つ時、音に囚われないでください。
隣の人がいい音を出しているからと
負けじと力を入れる必要はありません。
力を入れたら手が腫れます。
痛みを感じたら、力を入れすぎです」と言いながら、
一人一人にご指導くださいます。
自分で打っても
ぺしん、ぺしんとしか音がでないのに、
大倉さんが私の手首を持って
やさしく大鼓に当てると
カーン、と音が響くのに驚きです。
哲学者ニーチェは
「人間の本性はエゴイズムである。
その根源は『力への意志』。
人より優位でありたい
自分をより大きく見せたいという
それが人間なのだ」と言っています。
私はまさに
大鼓を打ちながら
自分のエゴイズムに向き合いました。
ふとした瞬間、
自分でも、カーンといい音が出る。
そうすると、次は必ず力が入るんです。
「この音を次も出したい!
いや、もっといい音を出したい」
そんな気持ちがそうさせるのでしょう。
そうしてやろうというわけでなく、
自然とそうしてしまい、
そんな自分に苦笑をしていました。
こんなにも自分が
エゴイズムにコントロールされているのだと
改めて知ることになりました。
それは決して、心地よいものではありません。
でも、それが人間なんだと受け入れる、逃げない、
哲学を学ぶことで、それができるようになりました。
きっと無意識に余分な力を入れて、
わざわざうまくいかないようにしていることって、
大鼓に限らず、
人生でまだまだあるのかもしれません。
まさか大鼓を打つことで
自分のエゴと向き合うなんて!
想像もしていませんでしたが、
今回の伊勢への旅で得た大きな成果のひとつでした。